Robert B. Parker

突然だった。ロバート・B・パーカーの訃報を聞いた。2010年1月18日。ボストンでいつものように机に向かい執筆しているときの心臓麻痺。77歳だった。

パーカーの作品に最初に出会ったのは20年以上も前。ただ当時は、ディック・フランシスやギャビン・ライアル、そしてジャック・ヒギンスの作品のようにのめり込むという感じではなかった。パーカー作品を代表する主人公スペンサーの饒舌が、若輩の私には何やら軽るいだけに映ったのだった。調子に乗って、人間はアメリカ人が面白いが、ハードボイルドは英国ものに限る、なんて偉そうに周りに吹聴したりしていた。

そして時間は流れ、気がつくと人生も半ばを過ぎたとき、ひょんなことから再度パーカー作品を手に取ってみると、これがもの凄く良かったのだ。まさに心に染み渡る、といった感覚。ときに絶望的な現実に対して、気負うことなく洒落た軽口を叩きながら立ち向かってゆく男たち。それを支える女たち。主人公や恋人、仲間たちは勿論、悪人や少し顔を出すだけのちょい役たちも全て人物造形がいいんだよなあ。それなりに様々な喜怒哀楽を経験し、いろいろなことを考え、悩みもがきながらも生きてきて、やっとパーカーが伝えたかったであろうことが分かり始めたのかも知れない。

これから先新作が読めないのは本当に残念だが、この40年近く休まず書き続けた作家には、群と呼べる作品が燦然と輝いている。そして日本人の私には、原作を読む喜びの他に、大好きな菊池光の翻訳「菊池節」を堪能できるという楽しみもある。文句は言うまい。人生、満足を知ることを、ロバート・B・パーカーが教えてくれたのだから。

 

ロバート・B・パーカー

ロバート・B・パーカー

  1. コメントはまだありません。

  1. トラックバックはまだありません。